太陽光発電システムは、長期的に安定した発電量を維持できるように定期点検を行いましょう。
メンテナンスを行うことで安全性とシステムの導入効果が向上し、太陽光発電システムを利用するメリットも充実してきます。
本記事では、太陽光発電のメンテナンスの義務化と必要性、点検の内容と費用相場を解説します。
1. 太陽光発電のメンテナンス義務化とは

2017年4月に改正FIT法により、太陽光発電のメンテナンス義務化のルールが改定され、
出力50kW以上の太陽光発電システムに加えて、出力10kW未満の住宅用太陽光発電もメンテナンスが義務化されています。
経済産業省によるメンテナンスの義務化では、太陽光パネル、パワーコンディショナーの清掃や交換と、目視点検、計測器を使用し定期点検を行うことが内容に含まれています。
したがって、太陽光発電の事業計画を行う際は、太陽光発電のメンテナンスについてしっかり対応することが義務付けられています。
2. 太陽光発電のメンテナンスの必要性

太陽光発電のメンテナンスが義務化されることで、主に以下のポイントが改善または向上するようになります。
- 太陽光発電設備の寿命が維持される
- 太陽光パネルの発電効率が安定する
- 太陽光パネルの損傷や落下による危害を防ぐ
- 再エネを利用した事業を促進できる
定期的にメンテナンスを施すことによって、太陽光発電システムの故障やトラブルに対して、早期発見・早期対応が可能になるため、太陽光発電を利用する上で安全性が確保できるようになります。
また、メンテナンス義務化によって、PPA事業の運用において、事業者と需要家が信頼と安心を得て契約できるメリットもあります。
では、さらに詳しくメンテナンスの必要性について、以下のポイントを確認しましょう。
- 発電量の低下を防ぐ
- 故障を早期発見できる
- 自然災害に備える
- 盗難被害を防ぐ
2-1. 発電量の低下を防ぐ
太陽光発電システムは、屋根の上や敷地など、自然環境にさらされた条件下に設置するため、雨や風などによる劣化や汚れが伴います。
そこで、定期的にメンテナンスを行うことで、太陽光パネルに付着した汚れや枯れ葉などの不要物を清掃したり、ひび割れなどの損傷を見つけることができるようになります。
太陽光発電の発電量を安定させるためには、太陽光パネルをはじめ周辺機器を最適な状態で稼働させることが必要になり、発電量の低下を防ぐには定期メンテナンスが必要となります。
2-2. 故障を早期発見できる
定期的にメンテナンスを施すことができれば、設備機器の故障をいち早く発見できるため、
トラブルが拡大する前に対処することができます。
メンテナンスを怠るリスクは、設備機器の損傷や落下による事故、発火による火災など
危険性が伴うため、万が一に備えた点検とメンテナンスが必要になります。
なお、定期メンテナンスの頻度については、4年に1度のペースで点検を行うことが推奨されています。
2-3. 自然災害に備える
特に、台風の多い地域や積雪や塩害地域では、自然災害によって太陽光発電システムに問題が生じるケースもあります。
自然災害の増加により発電所の損害のケースも発生しており、定期的なメンテナンスについて改めて重要視されています。
※自然災害による被害の例
- 太陽光パネルの破損:台風、竜巻、落雷、ひょう、あられなど
- 水没・浸水による太陽光パネルの破損:台風、大雨、局所豪雨などの水害
- 地盤の割れによる太陽光パネルの倒壊:地震
- 架台の倒壊:積雪
2-4. 盗難被害を防ぐ
太陽光発電システムのケーブルの盗難が多発しており、人の出入りが少ない発電所などでは特に注意が必要となっています。
ケーブルに使用される「銅」の転売を目的とした盗難事件で「銅」の価格高騰の背景があります。
狙われやすい発電所の特徴としてメンテナンスが行き届いていない点があげられています。
したがって、人の出入りが少ない発電所では盗難が起こる傾向が高くなるため、今までメンテナンスを怠っていた事業所では、発電所の運用・管理を見直すことが必要です。
3. メンテナンスの主な内容

太陽光発電システムのメンテナンスでは、目視点検と計測による作業があります。
- 目視点検:システムの汚れ、サビ、破損、ボルトのゆるみ等を目で見て確認する
- 計測:漏電や発熱の確認とメーカーの規定値で電気が流れているか計器で測定する
では、もう少し詳しく、太陽光発電システムのメンテナンス方法を確認しましょう。
3-1. 太陽光パネルの破損・発熱のチェック
太陽光パネルの発熱による不具合(ホットスポット)で異常が起きている場合は、電流の流れが悪くなり発電量の低下に繋がります。
ホットスポットの状態を放置しておくと、太陽光パネルが破損したり発火の恐れもあります。
破損や発火を防ぐには、遠隔監視装置などで発電量をチェックすることや赤外線サーモグラフィで発熱部分を探すことなどの方法があります。
3-2. 太陽光パネルの清掃
太陽光パネルに砂ぼこりが付着して堆積したままになっていると発電効率が低下する原因になります。
安定した発電量を維持するには、太陽光パネルの専門清掃業者に依頼をして洗浄する必要があります。
太陽光パネルの清掃費の相場は、パネル1枚あたり、約500円〜1,000円程度です。
3-3. ボルトの緩みの確認
太陽光パネルを固定している架台のボルトの緩みから、台風など強風によって太陽光パネルが飛来する危険性が高くなります。
太陽光パネルの飛来によって隣家や通行人に当たる可能性もあるため、パネルを固定する留め金具の状態を点検しましょう。
ボルトの緩みについては、定期メンテナンスで目で見て点検し、緩みがある場合は、しっかり締め直して固定しておくことが必要です。
3-4. 絶縁抵抗値を計測
太陽光パネルやケーブルから流れる電流が、規定値以上であるか絶縁抵抗値で計測します。
計測して数値が低い場合は、漏電や感電のリスクが高くなりますので、電気系統のケーブルの劣化状態やコネクタの穴がないか等チェックして修理を行うことが必要です。
3-4. 接続部分の点検
配線ケーブルや接続部分の状態を目視で点検します。ケーブルの劣化がないか確認し、問題がある場合は修理を行います。
ケーブルの破損の原因は、雨水の侵入や、紫外線による劣化、温度変化による収縮などがあげられます。
3-5. 発電量のチェック
発電量の確認は専門業者に依頼して測定値でチェックしてもらうことができます。
一方、モニターを設置している場合は、随時、日常的に発電量のチェックができます。
発電量の異常がわかることで、太陽光発電システムの故障を早く見つけることができるため、定期的に発電量を記録しておくと良いでしょう。
4. 太陽光発電のメンテナンスの費用相場

太陽光発電のメンテナンスについて、住宅用または産業用の費用相場を解説します。
紹介する費用相場については、メンテナンスの内容や頻度、依頼する業者によって異なります。
4-1. 住宅用の費用相場
1回あたりのメンテナンスは、およそ5万円~10万円が相場です。
追加で足場が必要な場合は、別途費用がかかります。
4-2. 産業用の費用相場
低圧太陽光発電の場合、年間の平均で10万円~15万円程度が相場です。点検・メンテナンスの内容や頻度によっては割高になることもあります
高圧〜特別高圧の太陽光発電の場合は、100kWから200kW規模で年間平均15万円~20万円程度です。
特別高圧2MW以上では、年間平均で100万円〜200万円程度が相場です。
4-3. 修理・部品交換費用
太陽光発電システムの修理や交換費用については、以下の費用相場が目安となります。
- 太陽光パネル:1枚あたり10万円~15万円程度
- パワーコンディショナー:修理・交換10万円〜40万円。部品交換10万円程度
5. 太陽光発電のメンテナンスの注意点

太陽光発電は、安定した発電量を維持できるように以下のポイントに注意して維持管理を行いましょう。
5-1.自分で目視点検を行う
定期的なメンテナンスを専門業者に依頼するほかに、目視点検を日常的に行い、大規模なトラブルにならないように点検を行いましょう。
5-2. 保証期間を確認しておく
太陽光発電システムの各種機器の保証内容と期間について確認しておきましょう。
保証期間内であれば無償で対応してもらうことも可能です。
メーカーによって保証期間が異なりますので、事前に把握しておくと良いでしょう。
5-3. アフターフォローのある業者を選ぶ
太陽光発電システムは、導入時だけでなくアフターフォローのある業者を選ぶことが大切です。
太陽光発電システムは、専門分野に関わる内容となるため、システム導入後の故障やトラブルに対応してくれるサポート体制について確認しておきましょう。
まとめ
太陽光発電システムは、法律によりメンテナンスが義務化されています。
システムを安全に効率よく運用・管理・保守できるように定期的にメンテナンスを行い、
日常的にできる目視点検を行って、大きなトラブルにならないようにしてきましょう。